オリンピックとフェアプレイについて



目次
主題設定の理由
調査研究方法
結果
考察
まとめ
感想
参考文献

主題設定の理由

 2004年8月13日から29日までの17日間アテネオリンピックが行われ、その中で今までで一番多い24件ものドーピングが発見された。 またこの出来事は新聞やニュースでも多く取り上げられ、一番興味深かったためこのテーマにした。

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調査研究方法

 オリンピックやスポーツ、スポーツマンシップに関する文献やインターネットWebサイトを利用して調査研究しまとめる。

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結果

 
1.オリンピックについて

 オリンピックには古代オリンピックと近代オリンピックがあり、このうち古代オリンピックは、古代ギリシャのエリスで4年に一回行われた当時最大級の競技会であり、祭典である。 ギリシャ語ではオリンピアの祭典とも呼び、その名はエリスの祭神ゼウスの神殿があったオリンピアにちなんでいる。紀元前9世紀ごろから紀元4世紀ごろにかけて行われた。オリンピックが4年に1回開かれる理由は、  古代ギリシャ人が太陰歴を使っていたからで、現代一般的に使われている太陽暦の8年が、太陰暦の8年と3カ月にほぼ等しいことから、8年という周期は古代ギリシャ人にとって重要な意味をもっていた。暦をつかさどるのは神官であり8年ごとに祭典が開かれるようになり、後に半分の4年周期となった。

 これに対して近代オリンピックは、西暦が偶数の隔々年(4年に1回)に国際オリンピック委員会(IOC)が開催する、世界的なスポーツ大会であり、単にオリンピックと呼ばれたり、日本ではそのシンボルマークから五輪とも呼ばれたりしている。  古代オリンピックの火が途絶えて1500年が経った1892年、フランスのピエール・ド・クーベルタン男爵は、ソルボンヌ講堂で行った「ルネッサンス・オリンピック」と題する講演の中で、初めて古代ギリシャのオリンピアの祭典をヒントにしたオリンピック復興の構想を明らかにし、1896年第1回大会がオリンピックのふるさとであるギリシャのアテネで開催された。

  近代オリンピックの象徴でもある五輪のマークはクーベルタン男爵が考案し、世界5大陸(ヨーロッパ・アジア・アフリカ・オセアニア・アメリカ)と5つの自然現象(火・水・木の緑・土の黒・砂の黄色)とスポーツの5大鉄則(情熱・水分・体力・技術・栄養)を、原色5色(および単色でも可)と5つの重なり合う輪で表現したものである。  5つの重なり合う輪はまた、平和への発展を願ったものである。この五輪マークは、1914年にIOCの創設20周年記念式典で披露され、1920年のアントワープ大会から使用されている。
   
五輪マーク


2.オリンピックの問題点

 オリンピックの問題点のひとつにその商業主義がある。1970年代まで、オリンピックはアマチュア選手のみの参加で、広告などはあってもとても地味なものだった。このころのIOC は商業主義を排除していた。しかし、これでは開催地に赤字がでたり、ゲリラの標的にされたりしたためどの都市もオリンピック開催を敬遠した。

 その後1980年にIOC 会長に就任したファン・アントニオ・サラマンチ氏はオリンピックに商業性を持ち込み、1984年のロサンゼルスオリンピックから巨額のテレビ放映権料や、公式スポンサーからの莫大な協賛金を運営費として大幅な黒字をだした。このため多くの都市が、経済効果を求めてこぞってオリンピックを招致するため、開催地を決めるIOC に対しての接待をはじめた。開催地側はIOC に票を入れてもらうため巨額の接待費を出さざるを得なくなった。

 このような問題がこれからも続くようならば、オリンピックが汚れたものだと知られ、オリンピックにクリーンで高潔なイメージを求めるスポンサーやテレビ局からの何十億ドルという収入の道が断たれてしまい、昔の商業性のないオリンピックに逆戻りしてしまう。

 もう一つの問題点は今回の研究のテーマである「ドーピング」である。

 オリンピック憲章ではドーピングを以下のように定義している。
 『ドーピング(doping)とは、選手の健康にとって潜在的に有害で、かつ/又は競技能力を増幅させる可能性がある手段(物質あるいは方法)を使用すること、あるいは、選手の身体に禁止物質が残存している、あるいは禁止物質、又は禁止方法を使用した証拠が認められることである』

 ドーピングで使われる薬剤をドラッグ(drug)またはドープ(dope)という。もともとドープというのは、南アフリカの先住民カフィール族が、疲労回復や士気を高めるために飲む刺激・興奮剤だった。これが「興奮性の飲料」の意味になり、ドーピングの語源となった。  また、doping が初めて英語の辞書に載ったのは1889年で、「競走馬に与えられるアヘンと麻薬の混合物」と書かれている。

 スポーツの世界でもドーピングは昔からあり、古く紀元前三世紀には古代ギリシャの医師ガレンが、選手に興奮剤を処方した記録が残っている。

 19世紀になると、競走馬や競争犬にヘロイン、コカイン、カフェイン、モルヒネなどを与えるようになった。さらに19世紀後半になるとこれが人間のスポーツ界にも広まった。1886年には、ボルドー−パリ間の自転車レースでイギリス選手が興奮剤の過剰摂取で死亡したという、  ドーピングによる世界初の死亡例は記録されている。この頃のスポーツにおけるドーピングはまだカフェインなどの興奮剤の過剰摂取が大半であり、興奮剤によってテンションを上げトレーニングや競技に望んだ。

 次に多く使われるようになったのは、1934年にその合成法が開発されたアンフェタミンを代表とする覚醒アミン(中枢神経興奮薬)である。これは1955年のフランスの長距離自転車レースで多くのドーピング違反が見つかって以降、ボクシング、サッカー、陸上などに広まった。  そして1960年のローマオリンピックでは自転車のタイムトライアルに出場していたデンマークのクヌート・イェンセン選手が興奮剤アンフェタミンの過剰使用によりレース中に失神して転倒、頭を打って死亡した。

 興奮剤を服用すると以下のようなことが起こる。
  • 心臓の働きが活発になったり、血圧が高くなったりするため、からだ全体に血液がよく流れる。血の巡りがよくなる。
  • 肺に空気を送る管である気管支が拡がるため、酸素をたくさん取り込む。
  • 胃や腸などの消化管の動きが悪くなるため、食べ物の消化が悪くなる。
  • エネルギーのもととなる糖を貯め込んでいる肝臓から糖を血液に送り出すため、エネルギーがたくさん使えるようになる。



 やがてこれもドーピング検査で見つかるようになると、エフェドリン(交感神経興奮薬)、男性ホルモン製剤のテストステロン、タンパク同化ステロイドの順に使われるようになった。このうちタンパク同化ステロイドは1950年代後半からスポーツ界で使われるようになった。

 ドーピング規制を受ける薬物や方法の分類は,以下のような(IOC)の「ドーピング指定薬物の分類及び方法のリスト」に従って行われている。

 *ドーピング指定薬物の分類  
  1. 競争心を高め、疲労感を抑える「興奮剤」(カフェイン、エフェドリン等)
  2. 苦痛を和らげる「麻薬製鎮痛剤」(モルヒネ等)
  3. 筋肉増強目的の「男性ホルモン製剤」、「タンパク同化ステロイド」
  4. 尿を増やし、減量・薬物排泄に効果的な「利尿剤」
  5. 薬物の存在を隠す「隠蔽剤」
  6. 成長及びタンパク同化作用を持つ「ペプチドホルモンとその同族体」(効果はBとほぼ同じ)
  7. 手足の震えを和らげる「β遮断剤」
  8. タンパク分解を遅らせ、脂肪を燃焼する「β2遮断剤」

 

 また、ドーピング違反に対する罰則は次のようになっている。

 

a.ドーピング指定薬物ならびに禁止されている方法  

  • 1回目の違反:2年間の競技出場停止
  • 2回目の違反:競技からの生涯追放
b.病気の治療目的にエフェドリン,フェニルプロパノールアミン,プソイドエフェドリン,カフェイン,キニーネなどを服用し,陽性になった場合
  • 1回目の違反:最長3ケ月間の競技出場停止
  • 2回目の違反:2年間の競技出場停止
  • 3回目の違反:競技からの生涯追放
  •  

3.フェアプレーについて

 
 フェアプレー精神とはスポーツにおいてはルールを守った上で自分も他人も人として尊重する心構えのことで、fairは美しいが原義で、fair playのfairは公平、公正の意味である。

 サッカーでもワールドカップをはじめとし、様々な場面でフェアプレーに関する問題が出てきたため、国際サッカー連盟(FIFA)は1997年に次のような10か条にわたる「サッカーの行動規範」(Football's code of conduct)を示した。


 FIFAサッカー行動規範
 
  1. 勝つためにプレイしよう。
  2. 公正にプレイしよう。
  3. ゲームのルール(the Laws)を遵守しよう。
  4. 相手、仲間、審判、事務局、および観客を尊敬しよう。
  5. 尊厳を持って敗北を受け入れよう。
  6. フットボールへの関心を促進しよう。
  7. 堕落、薬、人種的偏見、暴力およびその他の危険を拒絶しよう。
  8. 不正への誘惑に対する抵抗を助けよう。
  9. 我々のスポーツの信頼を損ねようとする者を非難しよう。
  10. 我々のスポーツの評判を守る者を誇りにしよう。

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考察

 ドーピングを行われる要因の1つに、選手が達成した結果に対する莫大な報酬がある。  バルセロナ五輪でインドネシア初の金メダルをもたらしたバトミントン選手には、10億ルピア(約6400万円)が贈与された。ほかの国々でも報奨金だけではなく、 年金、住居、贈り物などを報酬として選手に贈られる。また記録や順位だけではなく、有名になることでテレビCMや取材など報奨金以外にも多くの金銭を得ることができる。
 今のスポーツ界には、フェアな精神より勝利、名誉、金が重要視される傾向がある。この傾向が強くなるとドーピングへの抵抗意識がなくなり、スポーツのあり方そのものが変わってしまう可能性がある。

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まとめ

 ドーピングは以下の3つの観点から禁止されている。  
  1. スポーツにおけるフェアプレー精神に反する行為である。
  2. 選手の健康を損ね、場合によっては生命をも奪う危険性を持つ。
  3. 薬物の習慣性や青少年への悪影響など社会的な害を及ぼす。
 今のスポーツ界には、フェアな精神より勝利、名誉、金が重要視される傾向がある。この傾向が強くなるとドーピングへの抵抗意識がなくなり、スポーツのあり方そのものが変わってしまう可能性がある。

 現在のスポーツが勝利至上主義によるプレッシャー、金銭問題、世界記録への挑戦、国家への威信、などの背景が現代の資本主義経済の流れ(メディア、広告、人気による年俸アップなど)に取り込まれてしまっているという状況を打開しない限り、ドーピングする側とそれを取り締まる側の技術のいたちごっこが続き、スポーツからドーピングをなくすことはできないと思われる。
 

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感想

 2004年の夏にアテネオリンピックが開催され、そこでスポーツにおけるドーピングが大きく問題になったことから、このレポートではそのドーピングとオリンピック、フェアプレーについて調べることにした。その結果、フェアプレーの概念が一言では言い表せない、とても難しいものであることがわかった。 基本的には「ルールを守った上で、相手がいることを考えながらプレイする」心構えのことだが、この考え方はもともとイギリスで発達したもので、競技に対して賭けをする習慣があったため、「最後まで堂々と戦う」という考えにプラスして賭博との関わりから生じてきた「ルール(契約)に従う」という観念から成長してきたものである。 そのため近代スポーツにおいてフェアプレーが、「チーム全体に対する自己犠牲」や「ルールに従った上での自由競争」と読み間違えられてきたのだと思う。

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参考資料一覧
・文献
  • 高橋正人『ドーピング スポーツの底辺に広がる恐怖の薬物』講談社、2000年
  • 友添秀則『スポーツ倫理を問う』大修館書店、2000年
  • 正木正之『スポーツとは何か』講談社現代新書、1999年
  • 谷口源太郎『日の丸とオリンピック』文藝春秋、1997年
・インターネット
  • 『ドーピングの話〜一覧〜』 http://www.kobepharma-u.ac.jp/~clinical/doping-hotline/doping/main.html
  • 『◆スポーツ文化:フェアプレーとスポーツ文化を考える』 http://www.naash.go.jp/muse/culture/asami.html
  • 『ImageOlympic-rings.png - Wikipedia, the free encyclopedia』 http://en.wikipedia.org/wiki/Image:Olympic-rings.png
  • 『FIFA Magazine - August 1997』 http://www.fifa.com/fifa/pub/magazine/fm8-97.3.html


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